生地見本の「Super 100’s」「Super 120’s」「Super 150’s」。数字が大きい方を選べば、良いスーツになるのでしょうか。Super表示は、ウール繊維の細さを知る手がかりです。ただし、丈夫さや涼しさ、仕立て上がりまで採点した総合評価ではありません。
表示の意味が分かると、価格やブランド名だけでは見えない違いを質問できるようになります。この記事では、100’s・120’s・150’sの基準と、仕事用にも特別な一着にも役立つ見本の読み方を整理します。
Super表示とは?糸ではなく、ウール繊維の細さを示す
一本の糸は、多くの繊維を集めて作られます。Super表示が示すのは、その糸の太さや生地の糸の本数ではなく、ウール繊維の平均直径に関する区分です。数字が大きいほど、平均繊維径の上限が小さくなります。
ISO 18103は、ピュアバージンウールで作られた完成した織物のSuper S表示と、その測定方法を定めています。原料を説明する言葉として耳にすることもありますが、規格を読む際は、完成した生地から取り出した繊維が対象になる点を押さえましょう。ISO 18103の公式概要。
糸の太さを表す「番手」とも、別の情報です。細い繊維を使っていても、繊維を集める量や糸の構成は変えられます。そのため、Superの数字から、糸の太さや生地の厚さを直接読み取ることはできません。
100’s・120’s・150’sの違いを数値で見る
ISO 18103:2015に示される、平均繊維径の上限の基準値は次の通りです。単位のµmはマイクロメートルで、1µmは1ミリメートルの1,000分の1に相当します。
- Super 100’s:18.50µm
- Super 120’s:17.50µm
- Super 150’s:16.00µm
規格には、それぞれ+0.25µmの測定上の許容差も記載されています。これらは各繊維一本一本の最大径でも、その生地の実測平均値そのものでもなく、区分を決める平均繊維径の上限です。ISO 18103:2015の公開プレビュー、表1。

18.75µm、17.75µm、16.25µmという資料もある理由
Woolmarkの仕様書F-6の2016年版に掲載されたIWTO区分の一覧では、100’sが18.75µm、120’sが17.75µm、150’sが16.25µmと示されています。ISOの基準値に上記の許容差を加えた数値と一致します。比較するときは、どの資料の基準値なのか、許容差を含む数値なのかをそろえて読むことが大切です。Woolmark仕様書F-6(2016年版)、付表。
店頭で細かな数値を暗記する必要はありません。「数字が上がると、より細い繊維の区分になる」という関係を知り、その先の着心地は実物で確かめれば十分です。
数字が大きいほど、良い生地になる?
細い繊維は、柔らかな風合いを考える際の一つの要素です。Woolmarkもメリノウールの柔らかさを説明する際、繊維径に着目しています。滑らかな手触りを楽しみたい人には、Super表示が比較の入口になります。Woolmarkによるメリノウールの柔らかさの説明。
一方、完成した生地の性格は、それだけでは決まりません。同じSuper 150’sでも、糸の作り方や織りの密度が違えば、触れた印象や布の落ち方は異なります。数字が高いほど光沢が強い、シワになりやすい、摩耗しやすいと、一律に判断するのは避けましょう。
実例として、ヴィターレ・バルベリス・カノニコの「Revenge」はSuper 150’sのメリノウールを使い、経糸と緯糸に双糸を用いた生地です。公式説明は、糸の密度や構成による、緻密さと弾力のある性格にも触れています。細さと生地の構造を合わせて読む必要が分かる例です。Revengeの公式素材説明。
これは当該生地についてのメーカーの説明であり、すべての150’sが同じ性能を持つという意味ではありません。ブランドを比べる場合も、具体的な品番を並べて判断してください。ゼニアとロロ・ピアーナの生地の違いでは、その比較方法を紹介しています。
Super表示と一緒に確認したい4つの仕様
ここからは、表示とメーカーの説明を踏まえた、見本選びの提案です。100’s・120’s・150’sを比べる際は、次の情報を同じ条件で確認しましょう。
1.目付|重さの単位をそろえる
目付は生地の重さに関する情報です。g/mとg/㎡では、長さ当たりか面積当たりかが違います。異なる単位の数字だけを並べず、g/mの場合は生地幅も確認します。Super表示が同じでも、目付は同じとは限りません。
2.糸の構成と撚り|細さと作り方を分ける
単糸か双糸か、どの程度の撚りを加えているかも、候補を理解する手がかりになります。双糸は二本の糸を撚り合わせたものです。ただし、双糸や強撚という言葉だけで耐久性を保証することもできません。候補の生地がどんな着用を想定しているかまで聞いてみましょう。
3.織り方と密度|季節を数字で決めない
Super 150’sなら夏向き、100’sなら冬向きという分類にはなりません。季節に合うかを考えるときは、織りの隙間、厚さ、肌離れに加え、裏地や仕立ても確認します。冷房の強い室内と屋外を行き来する場合は、その環境も伝えると比較しやすくなります。
4.仕上げと風合い|触って、掛けて、光を変える
起毛の有無などの仕上げで、生地の表情は変わります。見本を指先で触るだけでなく、可能なら大きな布を肩に当て、ハリと落ち方、自然光での色を確認しましょう。シワの戻りを試したいときは、見本を強く握る前に店側へ確認します。

仕事用・出張用・特別な一着は、どう選ぶ?
日常の仕事用|着る頻度と座る時間を伝える
日常用の比較では、100’sや120’sを含む候補を見ながら、手触り、ハリ、扱いやすさの釣り合いを探すとよいでしょう。これは番号別の耐久性の保証ではなく、候補を絞るための進め方です。「週に何回着るか」「座っている時間が長いか」「徒歩移動が多いか」を具体的に伝えます。
同じ一着を連日着る予定なら、生地の番号を上げることより、休ませる時間を確保できるかも検討してください。パンツに負担が集中する働き方では、替えパンツを作れるか、ローテーションをどう組むかまで考えると選択が具体的になります。
出張・移動用|シワからの回復と現行仕様を確認する
出張が多い場合は、軽さだけでなく、長時間座った後の扱いやすさが気になります。トラベル用途を想定した生地も候補になりますが、Superの数字とは別に、現在の品番の特徴や取り扱いを確認しましょう。移動中もジャケットを着るのか、到着後に掛けておけるのかも、相談の材料です。
会食・式典用|150’sも含め、風合いを楽しむ
柔らかな手触りや落ち着いた光沢を重視する一着では、150’sを含む細い繊維の生地も比較してみてください。大切なのは、自分の好みと着用場面に合うこと。番号が高くても、強い艶が職場になじまないと感じるなら、別の候補が合う場合があります。
一律に「仕事は120’sまで」「式典は150’s以上」と線を引く必要はありません。生地の具体的な仕様と、体に合う仕立てを一緒に考えましょう。

店頭では、この順番で質問すると選びやすい
- 用途を伝える:季節、週の着用回数、座る時間、移動量を説明する。
- 候補をそろえる:近い色柄と季節向けの見本を、二〜三点並べてもらう。
- 表示を読む:Super、混率、目付の単位、品番を確認する。
- 違いを聞く:手触りだけでなく、ハリ、想定用途、取り扱いを比較する。
- 総額と仕立てを確認する:同じ仕様で見積もり、裏地やパンツの形まで検討する。
数字の差に対して、具体的にどこに魅力を感じたかを言葉にすると、価格差にも納得して選びやすくなります。選び方全体の整理には、季節・用途・頻度から考えるスーツ生地の選び方も役立ちます。
Super表示についてのよくある質問
Q1.Super 120’sは、120番手の糸という意味ですか?
現在のSuper表示はウール繊維の平均直径の区分です。糸の太さを表す番手や、一定面積に入る糸の本数と、そのまま置き換えることはできません。
Q2.Super 100’sは低品質なのでしょうか?
100’sという数字だけで、低品質とは判断できません。欲しいハリや見た目、着用頻度に合う生地なら、納得して選べる候補になります。
Q3.Super 150’sは仕事に使えませんか?
一律に使えないわけではありません。糸の構成や織りの密度、目付などの仕様と、着用頻度を確認します。柔らかさと日常の扱いやすさを、具体的な見本で比べましょう。
Q4.数字が大きいほど、夏に涼しいですか?
Super表示は涼しさの評価ではありません。厚さや織りの隙間、裏地、着る環境を合わせて確認します。150’sという表示だけで、薄手とも春夏用とも判断できません。
Q5.数字が大きいほど、必ず価格も高くなりますか?
繊維の細さは価格を考える一要素ですが、Super表示から最終的なスーツ価格は決まりません。生地のブランドやシリーズ、仕立て、追加仕様まで条件をそろえて比較してください。
Q6.何年くらい着られるか、表示から分かりますか?
Superの数字から寿命を年数で予測することはできません。頻度、摩擦、サイズのゆとり、手入れなども関わります。スーツの買い替えサインと長持ちさせる習慣も参考にしてください。
数字を理解すると、好みに合う一枚を選びやすくなる
100’s・120’s・150’sの違いは、ウール繊維の細さを読むための手がかりです。数字を覚えたら、目付、糸の構成、織り、仕上げへと目を向けましょう。日常の仕事に必要な扱いやすさも、特別な日の柔らかな風合いも、実物と自分の使い方を重ねて考えることで、納得できる一着につながります。
知識を、あなたの一着へ。
記事で得た知識を、体型や着用場面に合う一着へ。大阪・本町のZENTILEで、生地・仕様・ご予算を一緒に整理します。


